第4章 モノとイメージのアメリカ
第4章 モノとイメージのアメリカ
宇宙開発
アメリカとフロンティア
未知の土地での冒険や挑戦はフロンティア精神として礼賛
実際には, 開発という名の国家的実験だったともいえる
ケネディが提唱
国内のフロンティアの消滅, それを機にした太平洋進出, そしてフロンティアは新たに宇宙へと拡大
アメリカの大衆文化と宇宙
地球外生物が, 先住民的な他者表象を補完しているようだ 植民地支配と, 失われゆく先住民の価値観をすくいとっていくパターン
『アバター』など
アメリカの市場的欲望と, 過去の先住民支配のトラウマ
冷戦と宇宙開発
ドイツのVロケットが始まり
アメリカとソ連の月到着競争
結果はアメリカが制した
現在では, 各国共同で開発を進める国際宇宙ステーションへ事業を移行
軍事的覇権から経済支配へ
平和目的による宇宙開発
現在も兵器の軌道上配備は禁止されていないという問題
ミサイル迎撃システム, 早期警戒システム, 衛星の軍事運用の開発が加速
衛星軌道上が重要な軍事拠点
宇宙開発と経済活動
衛星放送, 携帯電話, インターネットなどの情報システム
元は軍事目的で開発されたGPSなどはナビゲーションや携帯電話に平和的に利用され, 現在は世界の経済活動を実質的に支配するものになっている
鉄道ーアメリカ国家の推進力
大陸横断鉄道の基盤が完成
東と西が初めて線路によって結ばれた
国家を創り出した鉄道
都市や町も鉄道とともに生まれ, 産業が興った
空間や時間の障壁が亡くなった
「アメリカは鉄道の申し子」
20世紀はじめまでは, アメリカ形成に果たす鉄道の役割はかなり大きかった 鉄道建設の光とかげ
建設に駆り出されたのは貧しいアイルランド移民や中国移民
先住民も土地を奪われ, 絶滅に追い込まれるものたちもいた
しかし, プリモントリーで大陸横断鉄道が完成した際の写真に写っているのは皆「白人」である
鉄道版「泥棒貴族」の存在
国を挙げた事業であったため, 政府からの投資があり, 儲けのためには不正や賄賂を厭わない悪徳資本家が跋扈
鉄道の時代とその終焉
産業革命を象徴する力としての鉄道
近代的な時間の観念を植え付けた
人間の生活リズムから生まれる時間ではなく, 無機質に作り出される時間によって人間を支配する社会体制
自動車ー車社会の夢と終焉
映画『グラン・トリノ』
「アメリカン・ドリーム」は移民青年に託され, 移動の自由とアメリカ人像を守るためギャングに立ち向かう 移動の自由と大衆車
低価格, 修理のしやすさ, 燃費効率への配慮など大衆に優しい車としてのT型フォード
次第に米国車はその本義を忘れ, 外国車に押される
車社会と表象
モータリゼーション
車を必要とするライフスタイル
小説『石油!』アブトン・シンクレア
車社会の利権に群がる道路行政, 石油業界, 不動産業界, ハリウッドなどの文化産業が自由の統制役に
貧しい農民や黒人が貧困や差別から逃れる手段としての車
しかし, その因習, 階級, 人種を横断するという期待は裏切られる事になる
監視社会への恐れ
『モダン・タイムス』など
自動車ビッグスリーが集う生産拠点であった
1960年, 黒人音楽のレコード会社「モータウン・レコード」が設立 ベルトコンベア式に倣った「スター」の大量生産で音楽による人種統合を試みる
海外自動車産業の成長, オイル・ショック, 「人種暴動」
日本に対する反感が募る
自動車の1世紀
19世紀末, 自動車の大半は電気か蒸気で走っていた ガソリン車が電気自動車を排除
近年では環境政策の影響を受け, 新たな局面へ
大きな不安の要素としての車
マイク・デイヴィス「自動車爆弾の歴史」
貧者の兵器としての車
モーターサイクルー鉄の馬のロマンと現実
アメリカの広大な国土が多様な交通機関を生み出す
特に, プライベートな交通手段が重要
20世紀の都市化によって, 個人の交通手段へのニーズも高まる 二輪車の実用性が認識され, 本格的に普及
第一次世界大戦とハーレー
機動性を生かした立ち回り
元兵士の多くは戦後も二輪を愛用
軍用バイクとされ多く使われたハーレーはその後も若者の支持を得た
またもや軍用としてバイクは成長
モーターサイクルと反社会的勢力との結びつき
帰還兵たちの抱えた空虚感, ニヒリズム
アウトロー集団とモーターサイクル
戦後社会にうまく適合できない帰還兵たちの中に, 彼らと徒党を組むものも
ヘルズ・エンジェル
軍と強い結びつき
1950年代, 反抗する若者たちが社会への不満をモーターサイクルを通じて爆発 「理由なき反抗」「The Wild One」などの映画
kana.icon ハイ&ローがバイク集団なのもこの辺から来ている?自分はバイクと不良のイメージがそこまでリンクしていなかったが
モーターサイクルのもたらす自由と開放感, アウトロー集団の既成の社会体制への叛逆の姿勢
コミューンのあり方も, ヘルズ・エンジェルズのトライバリズムと通ずる
形而上的世界をも巻き込むモーターサイクル
1%クラブ
モーターサイクル・ギャングがバイク集団の1%という説があった
ハイブリッド文化ー混淆状態とそのへんか
Tex-Mex
メキシコ移民のもたらしたメキシコ文化とテキサスの文化が融合したもの
タコス, ブリトーなど
豆に加えて肉やスパイスを多用したチリコンカーン
「スパングリッシュ」
スペイン語と英語のミックス
テハーノ音楽
アメリカでの他民族混淆の四段階
北・西ヨーロッパの「旧移民」
「アングロ・コンフォーミティ」
南・東ヨーロッパの「新移民」
「メルティング・ポット」
均一化を目指した混ざり具合
「サラダ・ボウル」
文化多元主義の段階
民族集団の価値観や文化などはそのまま尊重, 公的領域のみ統一を目指した
1965年のアジア系とヒスパニックの大量移民によって, 公的領域の統一性も困難に 「多文化主義」
多様性が重視, 異種のものは混ぜないという形
同化から多元的共存という変化
内部の境界の行方
世代進行が進むと, それほど「民族」の結びつきが強くなくなった
インターマリッジの増加, 移動や越境の増加
2000年からは国勢調査で2項目以上の人種を選択できるようになった アンサルドゥーア「顔に表す」
有色女性たちの連帯
シンシア・カドハタ「草花とよばれた少女」
日系少女とネイティブアメリカン少年の連帯
黒人は深刻な人種差別の体験から孤立しがちである
ハイブリット文化を対象にする学問
カルチュラル・スタディーズ, ポストコロニアル理論, フェミニズム理論
ホミ・バーバ
「ハイブリディティ」を重要概念とする
文化の差異や校章が存在する中間領域に, 差別是正の可能性
スーパーマーケット
アレン・ギンズバーグ「カリフォルニアのスーパーマーケット」
スーパーマーケットの進化と格差社会
低価格と大量消費を可能にした画期的なシステムとしてのスーパーマーケット
自動車の普及と郊外の開発とともに, 大型スーパーも発展
低価格戦略が地域経済に与える影響への批判
従業員の搾取があるのではないかという懸念
不況下で安売りを支持せざるを得ない中間層や貧困層の存在
市民としての責任
ホールフーズ・マーケットのように, 地域住民を支えるシステムとして存在するスーパーも
消費という行為を個と社会を繋ぐシステムに参加する機会と捉え直し
リサイクルや, 非営利団体の運営するフェリー・ブラザ・ファーマーズ・マーケットなど
理想の社会作りに参加するという, アメリカの国の成り立ちに深く関わってきた意識
格差社会のこれから
消費に良心を込められるのはミドルクラス以上の層である
ジャンクフード
1970年代から, 「ジャンクフード」という言葉が使われるようになる 栄養に乏しいと思われた食品
どのような食生活を目指すべきかという議論を掻き立てる
マイケル・ポーラン「フード・ルール」
「フェイク」食品としての分類
ファストフード
ドライブスルーで入手できる
どこでもすぐに食べられる
過剰摂取に繋がりやすい
ファストフードという言葉はジャンクフードの20年前には存在
ジャンクフード自体が, 食とスピードを結びつけたファストフード社会への危惧
車社会の文化が食品業界に持ち込まれたことによる食品とスピードの融合
「食する(consume)」が「消費する(consume)」になった(シェローサー)
ジャンクと食育
テレビを見ながらジャンクフードを食べる家族の様子
1980年ごろから用いられた「カウチポテト」という言葉 運動不足による健康被害や情緒不安的, 怠惰なライフスタイルへの批判
女性の社会進出が進み, 外食の機会が増えたことが理由の一つである(シェローサー)
食育への関心
ジュンパ・ラヒリ「停電の夜に」
移民と食の関係
地名とつながる営みとしての食としての精神的な紐帯
「ジャンク」文化の反知性主義
貧困層にとってはそれしか選択肢がないということもある
危険性の警鐘にも関わらない「ジャンク」新報
アメリカの愛国的な反知性主義との密接な関係
「民主主義」のシンボルとしてのジャンクフード
日本幻想
表面的でオリエンタリズム的な「ジャポニズム」と対比するところの「日本幻想」
現実に日本を体験し, 自文化を変革し,, 社会を変えようとする傾向や運動
ゲーリー・スナイダー
アジアを体験し, その基礎の上に詩をかいた
1956年〜, アメリカ文化のアジアを見つめる眼差しが変容し始めた ポストモダニストの京都
スナイダー来日の背景
仏教や詩
西洋文明全般に対する懐疑
異文化の探究へ向かう
ギンズバーグやA・ウォルドマン
単純に個人的な宗教の探究や趣味の問題ではなく, 近代工業文明と資本主義に対抗するvisionの模索
スナイダー「文明をひっくり返すための梃子を手に入れる」
自らの文化と日本文化の融合・合流の中で生まれてきた未来像, 自らの変容と世界観の創造をもたらす存在としての「日本幻想」という「思想」